ある忠告/山部 佳
れた瞬間に
きみにとってのきみの存在価値が消滅する
きみはきみ自身のために在らなければならない
存在の心地よさを
自分以外の他者との関係性だけに求めてはならない
きみがこの星に在って
途方もなく薄く頼りない大気の底に暮らし
宇宙の果てしない崖に思いをめぐらせるのも
きみ自身のためでなければならない
ひばり鳴くのどかな春の野辺を歩くがいい
なぜひばりは鳴くのか
木々がささやかな芽を出し枝を風に揺らせ
タンポポやスミレやノビルやアシが
夏に向かって好き勝手に地面を占有してはびこる
虫たちが土の中から石の裏から朽ちた倒木から
這い出してきて動き回り始める
その理由を考えてみるがいい
私の忠告を聞き入れるか否か
それはもちろん
きみの周りのきみ以外の人間が決めることではない
それはきみが決めることである
きみはきみ自身のために生かされている
私はそのことを知って欲しい
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