粗忽な男/あおば
 

よほど自信がなかったのかと冷やかされながらも版元は
借金の山に埋もれる覚悟が出来ていないのだからと言い訳を吐いてこれまた話題となり
いつの間にかこの男も作家気取りで世を送った
そんなことを考えていると
ろくな人になれませんよと諭された宵
砂金を借金で探せ髑髏
千人力の山男
一人だけの連帯を強め
個人的な色彩で山を真っ赤に染める朝ぼらけ
すべては粗忽の地層に埋もれることなく混じっているから
この杣山だけは高く売れないと子孫が嘆いているのを知るよしもなく
終わりのないパン粉を売り歩く休載中のキャラクターが滑って転んで
こんがりと揚げられて
お八つの時間に配られていつの間にか無くなり
夕方までの緊張の糸を緩めることなく安定に維持するのさ
標語付きのパンだけが売れ残る午後4時
売れ残りのパンの味だけが妙に塩辛く感じるのは気のせいだと
いつもより水を余計に飲んでノルマを果たす律儀者が
粗忽な男にやりこめられる苦い顔を見て
ブラック珈琲を口ににたにた笑っているのは僕

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