詩集『十夜録』全篇/春日線香
光の加減によっては薔薇色にも
黄金(こがね)色にも輝いて見えた
どこで聞きつけたかは知らないが
世にもめずらしい宝物を見ようと
大勢の人が押しかけて
しばらく村はたいへん賑わった
探幽記
昼の熱が首に残り
薄もや漂う台所に下りていく
流しに秋刀魚(さんま)が落ちていて
しくしく泣いているので
そんなに泣いても だめだよ
焼くよ と断り
包丁の先導で
地獄を歩かせると
頭から尾までまったくの
美しい焼き魚になる
それを仏間に運ぶ
待っていると
誰かが
そっと襖を開け閉めする
あなたはわたしの
ご先祖さまですか
供
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