詩集『十夜録』全篇/春日線香
る
それどころかよく通った声で
ろうろうと詩など吟じて
時折 思い出したように声をかけてくる
猫をどこかにやるべきだとか
畑の手入れがなってないとか
聞いていると そうかもしれないと思う
でも 違うんじゃないかとも思う
そうこうしているうちに湯から上がり
おまえはこの話を知っているかと
にやにや笑いながら話しはじめた
知っているもなにも あめふらしの言うことだから
知っているはずはないのだけど
口ごたえして怒らせてしまったら
どうなるかわからない
黙って耳を傾ける
*
むかし
このあたりで崖が崩れて大勢死んだ
埋もれて手がつけられないありさまだった
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