春を装う死の詩/ただのみきや
み
誰かの破裂しそうな欲と絶を抱き寄せて
共に果てたかったのです
名を欲しながら理(ことわり)のない絵図に跳ね遊ぶ
鳥獣たちの鉤爪にこびり付いた叫びの子孫は
窮屈な上着を拒み続ける裸体の花嵐
犠牲は織り込み済みだと笑う〇gの熊蜂です
まるで決して欲してはいないかのよう
誰もが逆風に明るい色の襟を立てるのに
この解れて往く像は何者でしょう
狂気は陽炎ゆらり手招きし
無言で剪定する春の猟奇と創作レシピ
貞操なきヒューマニズムの汚染水に
目から耳から溺れて明日は湾になる
飲み干せなければ鰊(にしん) 満面の綻びで
呼ぶ魚が呼ばれる老婆のまな板の上
腸(わた)を抜かれて「唖(あ)っ」と開いた口形から
ふるえる言葉がそっと世界を覗き
生まれまいと踵を返す
残り滓は土地の肥やしに
散骨的散文か
散文的散骨か
それが問題だ
《春を装う死の詩:2014年3月5日》
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