サムイホシトカゲ/Debby
三月の終わりになると
サムイホシトカゲはいっせいに
繁殖行動に入る彼らの
背中いっぱいに蓄えられた
太陽のあたたかさを
子どもたちは一秋をかけて
サムイホシトカゲをポケットに詰める
そうやってこの星はなんとか
やってきた。
繰り返した冬のために
言葉を費やすときの
あのあたたかさのことを
あなたはふとした時に思い出すかもしれない
そこはきっと三月の暖かな日で
どこだっていい駅のホームからあなたは
空を見上げている冬のために
費やされた言葉の青みに。
サムイホシトカゲは夏になると
どこかへ消えてしまう彼らのことを
さがすひともいる、もうずっと探し
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