【HHM2参加作品】詩の入り口に立つためにー『母乳』ちんすこうりなー/深水遊脚
 
き立って魅力的だともいえる。

 踏み込んで理解しようとした人が、もう一つ苛立つポイントがある。

母乳ですと
答えてくれたら
それで満足なのに

家に帰る道を
思い出すかもしれないのに

問いの主体があらかじめ期待する答えは「母乳」なのである。その答えを聞き出して家に帰る道を思い出すかもしれない、という考え方について、一切理由は書かれない。答えを決めつけられて、理由のないままに投げ出されれば、母乳に対して好意的な解釈をしにくいのが人情だろう。母乳は母性と結びつき、育児についての精神論が連想されるかもしれない。母乳は母から子への愛情だと解釈され、問いの主体がそれに飢えている状
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