冬と波/木立 悟
 

爪弾く方へ近づく水紋
城壁の夜を巡る幽霊
硝子瓶をしたたる文字
人ではない静けさに満ち
あふれる


片方の目をふせ
嵐は川の向こうをすぎる
傾きのまま
時は轟く


橋の真上の
不明の名の雨
境の積み石
ひらく手のひら


川を塞ぐ光に触れ
さかのぼる小さな波を通した
何処かへ行こうとして
たどりつけなかった獣の骸
無垢なるものの無垢を
誰も知らない
波の行方を
誰も知らない






















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