冬と波/木立 悟
 




ひとつの夜が
わからぬものに照らされている
影は別の影のなかで
少しずつかたちを変えてゆく


夜へゆく海
線を見る背
置き去りの器
蒼に満ちる


魚のかたちの水のかけらを
指でつまんでは捨ててゆく
つまんでも つまんでも
虹は 尽きることがない


その日の音が聞こえない
音であって 音でないもの
そこにあって あたりまえの音


誰にも知られず金になり
やがてそのまま黒となる
霧の斜面を
抄う手のひら


門の影 柱の影
二重の影に照らされる空
白と灰をかきまぜながら
過程の無い身体を投げ出している



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