峯澤典子詩集『ひかりの途上で』について/葉leaf
たずまいが示されることがしばしばある。「すべもなく離れるしかない」という倫理を語るとき、そこに「法」は設定されない。今まで見てきたように、峯澤の作品を貫くのは、個別の生活の出来事に対し、その豊かさと個別性を十分踏まえたうえで個別に反応していくという働きであって、その個別性を超えた普遍性を定立しようとはしていないのである。その後に続く花屋と新聞紙の記述は、彼女が世界に対してきめ細かな配慮をした結果であり、何かしら普遍的な規範に従った記述ではないのだ。「法」という社会的なものによって規格的に物事を捉えるのではなく、あくまで自己の微妙で規格化されない倫理に従って詩行を紡いでいくということ。そこに彼女の詩
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