ほねのみるゆめ/itsuki
 
ぜか、その時は、わかるような気がしたのでした。彼女がことばを続けます。早朝の青い光が差し込む部屋で、彼女の声だけが響きました。
「君はさ、私があばらの中にいることで平原を駆けていた頃をおもい出したりするのかな。胃に食いものをいれて腹を満たす感触と、私の親愛なる寝室は似てるんじゃないかなって思うんだよ。」
彼女がはなすことを、彼は心地よく聞いていました。彼女にもそれがわかっていました。
「君が眠りの中で平原をゆくのだったらいいな、死にながら生きる君を、毎夜ほんとうに生かすのが私であるのなら最高だ。そうして君はその毎夜、君が生きた平原に私を連れてゆくのだね。」


いつも物静かにしている彼が、めずらしく、低い声で吠えて、ほねがその鳴き声に揺れました。気高く、凶暴で偉大な鳴き声だと彼女は思いました。そうして微笑みながら目を閉じます、もう一度、彼のゆめをみるためにです。



 
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