ほねのみるゆめ/itsuki
 
たが、彼女は放っておけば何時間でもページを繰ってゆくのでした。彼はいつもその隣で心地よさそうにうとうとしていました。


ある日彼女は部屋のずっと奥の本棚から、古ぼけた図鑑を引っ張り出してきました。彼の名前や、どんな姿かたちだったかを、知りたいと思ったからです。図鑑を彼に差し出して、彼女は教えてと言いましたが、彼は静かに首を振りました。彼女には、彼が少しかなしい顔をしたように見えました。彼は、じぶんが本当に生きていたころのことをなにひとつ覚えていなかったのでした。
それでは仕方ないと、彼女は図鑑のページを繰っては指差して彼に尋ねました。
「これは君かしら。どう、見覚え、ある?」
彼は首
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