キャンディと王様・前章/にゃんしー
していた。
「どうだった?」
乙彼がそう言い椅子を蹴ると、水樹はびくっと身体を仰け反らせた後、
「鴨長明は得意だから、方丈記が出てよかったわ」
と、ぼんやりした口調で返した。
「……水樹、大丈夫? 方丈記は出てないよ。古文で出たのは徒然草だよ」
乙彼が呆れた口調でそう言うが、水樹からは返答がない。
しばらくして、目の下に大きなクマを作った海が、危なっかしい足取りで入ってきた。
「どうだった?」
乙彼がそう訊くと、海は、
「清少納言だけは得意だから、枕草子が出てよかった」
と言う。乙彼はもはや苦笑いするしかない。
今更になって、やっと少しは目が覚めたらしい水樹が
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