キャンディと王様・前章/にゃんしー
 
それは、ジーンズ生地のショートパンツまですっぽり覆い隠している。
「父さんまだ寝てるからジャケットもらってきた。あの人どうせ寝正月だから」
 乙彼はダウンジャケットの裾から覗く薄小麦色の太ももを器用に動かすと、
 キャメル色のムートンブーツを穿き、
「じゃあ、いこっか」
 と言った。


 天気予報に反して、この日雪は降らず、いたずらのような快晴となった。
 その気持ちのよい天候は、
 普段なら寝正月を決め込みコタツで過ごす筈の人々までも誘い出してしまったらしく、
 初天神の屋台の並ぶ北野天満宮は例年以上に人で埋まっていた。


「もういいー。水樹と海、私の分もついでに
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