キャンディと王様・前章/にゃんしー
 
は目線をそちらに向けた。
 水樹が着ていたのは小紋で、ほぼ黒地に小さな紋様があるだけのシンプルな着物だった。
 彼女にしては珍しい、そして明らかに馴れていない化粧は厚く、
 派手な色の口紅が悪目立ちしている。
 自分で切ったはずのショートヘアはボーイッシュなままで、整えた表情が所在無さ気だ。
 乙彼はしばらく水樹を見つめた後、意地の悪い笑みを浮かべて、
「……昔、ヨシモトにこういう芸人いたよね」
 と言った。水樹は頬を膨らませ、
「どうせうちはそうですよー」
 と返す。海が、ころころと笑う。


気の強い水樹と口の悪い乙彼がいさかいをして、それをたしなめるのが海という関係性
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