春の雨/葉月桜子
 
朝起きると なんとなく湿った朝の空気が
私を眠りから覚ます

窓を開けてみると 
どこか生温かいかんじがする

もう春が来るのかな

春の雨は土を濡らし 葉っぱを濡らし
眠っている桜をトントンと 優しく起こす

音も聞こえないような 細かな雨粒は
少しくらい濡れても良いとさえ思える

生温かい雨は 私の肌にはりつき やがて心を濡らす

いつかの傷を負った心も 春の雨にうたれたら
もうどうでも良くなり 心地良くなる


春はもうそこまで来ていて
新緑の若い芽は いまかとその時を待っているけれど

春の雨は土を濡らし 君を遠くへ連れて行く


春が来ることで 皆 気持ちは踊るけれど
春が来なければ ずっとこのままいられるのか

春なんて来なければ ずっとこのまま一緒に笑っていられるのか


柔らかな暖かい光と風は 君を遠くへ 連れて行く


春の雨にうたれて 歩いた道を 私はきっと忘れない



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