水の紀/千波 一也
流されて、
すべもなく流されて、
どこへも、
どこの岸にも、
まったく辿り着いて、
などいない、
そことここ、
あちらとこちら、
まったく区別など、
できていない、
執拗な問いかけは
これ以上のなにを
流すことになるのだろう
ひとの命の
幾つを奪うことになるのだろう
時間は経過、
しただろう確かに、
外野として、
取り囲むその内側の、
時間ならば、
確かに経過しただろう、
凪を祈る言葉がある
いや
凪を祈る形式がある
容易な時刻と
容易ならぬ時刻とが
かなしく重なってしまうようにして
凪もまた
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