時が咲いている/千波 一也
 


よばれた気がしてふり返る、と
案の定だれもいない

もう
幾度となく通いつづけた道の途中で
わたしは今日も花を咲かせる

いつかまた
不意に、懐かしく
わたしの足を止めるだろう花を
ここらで咲かせる

そんな
ささいなわたしの傍らを
風は軽やかにくぐり抜けて
きっと
無数の花を
揺らしていったにちがいない

時が咲いている
見るも触れるもかなわなくても
ひとりわかればいい、と
わたしを満たして
笑んでいる






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