冬とむらさき/木立 悟
 




拳は白く
階段をのぼる
風が風を
金と緑に分けてゆく


夜の起動音
ふるえ にじみ
したたりを覆い
したたるもの


曇に沈む指に沿い
音はかがやきを増してゆく
黒を縁どる朱
土を咬む足爪


風を斜めにすぎる音
声のようなふくらみとなり
並び 重なり
水を散らす


失われ また失われる
夜と夜を縫い合わせ
隠そうとしても
隠しきれない淵


黒へ黒へ遠のきながら
色は色を呼んでいる
何も纏わぬものを
未だ名づけ得ぬものを
呼んでいる


重い声と音は沈み
沈みながら見えつづける
凍えの奥にたたずむも
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