楽園の鳥たち/ホロウ・シカエルボク
 
 

小さな世界のすべてが皮膚の上を滑り落ち床に僅かな痕跡を束の間残すころ狂気を孕んだ桑の実は庭で機会を逃していた、幼子の泣き声は無くてもいいもののように思えそれでも、鬱血した母親は張った乳房を晒して喰わせるのだ、天井の四隅に激しく真夜中が生きている、記憶の一番嫌悪な部分を転がりながら…三本足の野良犬が打ち震えながら結び目の緩い塵袋を振り回して解き人間様の食いかすを存分に味わうのが常な表通り、目も当てられぬ思いに辱められて売春婦が泣き崩れているポリバケツ、髪の毛からはかすかに小便の臭いがした、タクシーが肉食獣のような週末だから迂闊に車道の近くを歩くと噛み付かれて引き擦り込まれる、行き先を示すラ
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