見張り塔を、降りて/末下りょう
 
、雨は降りそうで
平熱は熱くめぐるけれど
風上にからだを向けていれば
乱れることもなく、
耳の奥の
神さまの影のなかに立つ巨人も
まだ僕の朝は、
奪えないでいる

きっと今夜も
見えないものから眼をそらせないまま
見張り塔に座って
僕は巨人の図鑑を眺めて、
馬に乗って近づいてくる
2人の男に気づかず
羊たちを見守る牧者がおこした焚き火の
小さな明かりと、立ち昇る煙を
たまに見るだけで
髪の毛の美しい女も
食事することは忘れなかったみたいに
帰り際、白いフラッグを
たたみなおす


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