宝石商/千波 一也
 





橙色がつらなると
なつかしさは熟して香る

窓辺に憩う
いのちの浅瀬の豊穣が
つがいのはじまり

羽もつすべての







灰は
おそろしくない

何の前触れもなく
灰と呼ばれる日が来るとしたら
それは真実おそろしい







往くものと
還るものとが交わって
紫になる

紫は、高貴で禁忌な色であるから

薬になれる
毒にもなれる







しろい影になりたくて
なれなくて

しあわせな言葉がひかりに、向かう

お迎えは
こころと裏腹なのだと







緑の大地は
なにいろの血を流すのか

知りたければ

おまえの小指を
ナイフでなぞればいい

深い海の底で生きるのが
おまえでなければ







金脈を
めざした
夢にも満たない時間の
ひとつぶたち、は

もう
まぶしくて顔がみえない
だけど、かならず
笑んでいる













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