宝石商/千波 一也
 


碧い鉱石を
もう、ずっとながいこと
求めつづけて
彼は

自分が
空に渡っていった
海であることを
憶えていない







夕日の熱は
裏切りという罪を燃やすのに
都合がいいから

だまってみてる

誰もみな
紅く凝り固まって







圧倒的な氷は
つややかな黒色らしい

そういえば

夜空の星は
黒鍵を弾けばこその
美であったかもしれない







とうめいな国に
等級という制度が築かれてから

ことばは難しくなった

それゆえ罰にさえ
透明度がある




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