昼過ぎの真須美/吉岡ペペロ
で今日こんなに玉ねぎを切っているのか
自問自答した瞬間答えは目のまえにあった
玉ねぎのように白くなりたかった
なみだが流れでている
あんなことするんじゃなかったとは思わなかった
からだでもいのちでもないどこかにカレーの染みのようなものがスタンプされてしまった
それを消すには玉ねぎを切るしかないのだった
玉ねぎがカレーに熔けだすのを想像する
出掛ける直前まで火はとめないでおこう
パートまでもう時間はなかった
玉ねぎを切る手はやまなかった
切りながら嗚咽とともに両目からなみだが流れでてとまらなかった
ざくざくと音をたてながら真須美はまな板のうえに白を殖やしていった
殖やしては白を煮立ったカレーのうえにかぶせていった
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