悲しき桃太郎/
吉岡ペペロ
桃太郎はさびしい男だ
きびだんごがなければ
ともに戦う家来はいなかったのだ
となりのベッドの見舞い客がそとの桜の様子を話している
彼は半身を起こし窓際に意識をやる
さっき一馬が開けてくれた窓からの微風が頬を撫でる
窓の下からひとの声があがっている
一馬や咲や真須美の声がまじっているような気がする
彼はその方にしっかりと顔を向けた
桃太郎はさびしい男だ
きびだんごがなければ
ともに戦う家来はいなかったのだ
しかし彼が桜を見ることはなかった
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