遠く暗い街/壮佑
 
すべてのモノは
銀色の樹木になってゆく

たちまち
生い茂った
樹木の枝の向こうに
透けて見える
夜空と
遠く暗い街

たくさんの
人々の影が
幽霊のように
さまよっては
夏至の宵の
蛍のような
僅かばかりの
こころの糧を
分け合っている

みんなは
何処から
逃げて来たのだろう
みんなは
どうしてあんなに
踵を返し続けるのだろう


 2

禿げ頭のてっぺんに
冠羽が三・四本
ピンと
立ちやがった鳥が
きょときょと
あたりを見回して
液晶の夜が
捩じれてゆく
遠く暗い街

夜の向こう側では
水の中で
死んで行った
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