傾滴路 ?/木立 悟
あるがままに斬り
森は森に重なってゆく
あるがままを喰み
枝のはざまを音は埋める
紅く溶けて
発光する
波が削る岩
魚が視る岩
生まれる瞬間を誰も見ない
そのあとにだけ 集まってくる
朝の網の目に
捕らえられて
白と黒の波
右肩の青空
指から離れる
行方という鉱
冬を巡る径
灰と鉄の径
丘の上の工場群
発電所より大きな映画館に
まばらな人影が呑み込まれてゆく
誰も出てこないまま 夜になる
壊れかけた灯だけが語り
あとはまばゆく黙り込む
うねる径 人の居ない径
丘の上へとつづく径
午後のままの曇
背を向ける鳥
なかば埋もれ
はばたく鳥
径から路へ渡されるもの
風もなく草を分ける鉱
海へ向かう坂道で
手のひらは静かにひらかれてゆく
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