年式の古いベージュのビートル/草野春心
 


  晴れた日も、雨の日も、花束は
  年式の古い、ベージュのビートルの
  黴臭いトランクに入れられていた
  (どこがどうとは言わないが)蝸牛に似た平べったい影が
  後部座席にいつまでも陣取っている
  やがてわたしのからだの或る一箇所から
  突如としてごつい骨が突き出してくる
  ほんとうだ それは突き出してくる
  おまえの つめたいピアノが
  世界に 爪をたてるとき




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