春の夜 ひいながたり/そらの珊瑚
やあ、姫。遅うなって、すまないことであったな。して、これはそなたへの土産じゃ」
お内裏様が手渡したものは、白いドレスであった。
「ありがとうございます。まあ、素敵なお召し物ですこと。これはもしや、西洋でいうところのウエディングドレスではありませぬか?」
「いかにも。実はリカちゃんにお借りしてきたもの。どうじゃ、まこと羽衣のように薄い布であろうよ」
「リカちゃん……。存じております。綾ちゃんがよく着せ替えして遊んでおりますあの人形ですわね」
「それでそちの機嫌がようなると嬉しいのう」
「はい。ようなりますとも」
二人は顔をみつめって、笑った。
「して、腹が空いた」
お内裏様は
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