物語/……とある蛙
物語に参加している僕は
確かに主人公ではない。
何かが主人公の物語に参加しているようで
何が主人公なのかとんと分からない。
夕闇の迫った黒い森の周辺を
朱色の夕焼けを背景にした
黒い鴉の鳴き声を聞きながら
彷徨(うろつ)いている主人公でもない僕
森の入り口には
黄色の首輪をした黒猫が一匹
口を半分開けて薄笑いしている
臭い 臭い
彼の口臭は臭い
おまえどこを漁ってきたんだ
と嘴太(はしぶと)鴉がステップを踏みながら
黒猫の頭の天辺(てっぺん)を突っつく
僕は猫に同情し、鴉を追っ払おうと
石を鴉の眼に向かって投げた
鴉はひょいひょいステップ
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