時里二郎詩集『ジパング』について/葉leaf
 
かはわからぬが、迂闊にも<原器>を床に落として割ってしまったのである。
 その結果、大殿は散りじりになった<原器>の破片を寄せ集め、新たな<原器>の再生を試みるために、ジパングの地誌の執筆に明け暮れているのだというのである。
       (「原器」)

 さて、このようにして時里は明確に虚構であるところの詩編を変幻自在に織りなしていくのであるが、読者としては素直にそれを虚構としてのみ受け取る必要もない。時里の虚構的詩編が、実は現実の何ものかを指示していないだろうか、と深読みするのも悪くない。
 この引用部では、ある国の存在の根拠を<原器>が担っていたとされている。これは様々なことのメタ
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