時里二郎詩集『ジパング』について/葉leaf
 
出すことで、残酷さによる不快と道徳的な賞賛の念を同居させている。
 時里の生み出す緻密な世界には、不条理だったり残酷だったりする出来事がたくさん生じる。だが、その世界の虚構性を明確に指定し、その世界を緻密に描き、さらにプロットを工夫することで、本来だったら不快であるようなことも、その不快性が薄められ、また他の快楽要因と共在させられることで、美しく快いものとなるのである。

 その<原器>の存在によって、ジパングの存在の根拠が保証されていたのであるが、大殿は、ジパングをわがものにしようという邪心を起こし、その<原器>を私物化しようとしたばかりか、彼の故意によるものか、もしくは過失によるものかは
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