時里二郎詩集『ジパング』について/葉leaf
 
編に対し共感も反感も示さない。

 大殿のつましい朝食には、乾燥した木の実のようなものが一個、皿に載せられているばかりである。それは極めて堅く、なかなか割れない。大殿は特殊な道具でそれを割る。迷宮のような皺、等高線のような褶曲のある果肉がその中にある。
 苦い。悔恨のように苦い。
 大殿はそれを一時間ほどかけてゆっくりと彼の舌で読む。
       (「食事」)

 さて、この部分が明確に虚構を志向していることは明らかであろう。朝食に木の実一個というのは現実にありえないし、それを舌で「読む」ということも現実にはありえないからだ。このような叙述で時里は自らの詩編を虚構として読むように読
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