穏やかな日/山部 佳
私は部屋を作った
始めた頃の記憶さえ霞むほど
長い長い時間をかけて
がらんとした真っ白い部屋
いろんな場所に出かけて
美しいと思った光だけを集めたら
真夏の南中した太陽の光に似た
真っ白い光になった…その光で満たす
昔 白い壁には一枚だけ
ターナーの絵を飾ってあった
絵は、今 窓になって
ガラス越しに緑の林を映している
何人かの人が
私の白いドアから入り
そして出て行った
この部屋に留まった人はいない
私の部屋にはなにもない
「現在」だけが
私の白い部屋を満たしている
失うものはそれしかない
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