この足は覚えている/bookofheaven
足の下の土の地面は
昔とちがって歩きやすい。
水はけもよくてジョギングに適した土が
使われているそうだ。
それでも 私の足は覚えている。
ジャリジャリの小石の入ったデコボコ道
塗れて指に食い込む泥道
刈り取ったばかりの田んぼのなか
残された稲の束の根っこを踏む感触
この足は覚えている
いまは快適なシューズの中で
寒さに弱く 走ればすぐに疲れて痛む
ジョギングに適した道だというのに
30分も歩けないけれど
この足は覚えている
ハダシでどれほど走れたか
ぬかるんだ道をどれほど早く駆けれたか
時間を忘れて 遠くまで行こうとした
母に呼ばれて戻る時間の長さときたら!
この足は覚えている
この足は知っている
かつて私は何ができたか
今の私には何ができるか
私自身が忘れてしまっていたとしても。
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