病鳥軌/木立 悟
腕に映る
影が熱い
揺れ動く羽が
胸をのぼる
淡く濃いもの
避けられぬもの
肩から飛び立つ
こころ失きもの
冬の小さな虫たちが
茶碗のあたたかさのまわりに集まり
互いが互いを生むように飛び交う
見えないものが
光の前に降りつづき
細い輪の影を打ち寄せる
ひとつまみ ひとつまみ
しんとなり
影は音を喰んでゆく
病の鳥が
鉄塔の宇宙を持つ腕の
抱くようにまわされた輪をめぐる
重なるふたつの影を越え
光のかたちの雨を飛ぶ
光のかたちの雪を飛ぶ
行方に寄り添う行方の息
青が曇に見える日の午後
まなざしからまなざしへ
片方から片方へと分かれ
病の鳥の火は混じり
想いの雪の傾きに降る
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