歴史の礫/ただのみきや
 
死語の道徳を囀る一羽の小鳥が
超高層ビルからヒラリと飛んだ
喪失した記憶 飛び方を思い出すための荒療治
ところが思い出したのは
自分が本当は魚だったということ
《しまった早まった! 》
だがもう手遅れだ
どんどん速度は増して行き
だんだん魚は夢心地
モノ凄いスピードで墜ちているのか
それとも天空へ打ち上げられているのか
どんどん恐れが遠のいて
だんだん気持ちが大きくなって
なにせ超高層ビル
落下時間もずい分あるようで
やがて鱗が剥がれ落ちキラキラと尾を引いて
真昼の空を駆け抜ける彗星のよう
そのうち空気の摩擦で発火して
暗い世を照らす小太陽の心持になり
地面に
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