薔薇/狸亭
1
薔薇の苗木を一本買った。
生まれて初めて
自分の手で庭に植えた。
木を強くするために
たった一つの蕾を切れと言う
胸が痛んだ。
薔薇の木に新芽がふいて
やがて蕾が三つもついて。
とうとうある朝
薔薇の花が開いた。
なんと鮮やかな真紅の薔薇だ。
2
真っ赤な薔薇が咲いたので
一輪切って
青磁の徳利に飾ってみる。
蕾が開いたばかりで
花弁がまあるくふっくらと
重なり合って
薔薇の花を見ていると
その美しさが不思議でならぬ
秘密を包んでいるようで
見つめれば見つめるほど
薔薇は美しくなり
胸がつまってくる。
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