診察室/山部 佳
 
穏やかな目をした医者は
「あなたの血液はどれくらいあぶくが立ちますか?」
と尋ねた
壁にアンコール・ワットの写真が飾られた診察室

この医者は修羅場をくぐってきていると直感した
肺や喉の貫通銃創を数限りなく見てきたのだ
地雷でもぎ取られた足や腕
熱病に罹患して黒く変色した唇
免疫力が低下した人間にところかまわず寄りつく蝿
そんな悲惨が
蛇口を捻れば水が出るくらいの日常となっている場所で

「少し胃が荒れているようですね…
安定剤のほうがいいかもしれません」
ああ 私という奴はなんと脆弱で恥知らずなのか
彼のような者にこんな科白を吐かせてしまうとは
そんな優しい言い
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