掌編「悪夢」/イナエ
 
にだけ生きている幸せ、彼らの究極の願いは、人に美味といわれることに違いない。これを残酷というならば、食をめぐる争いの中にいる野性動物たちの行為はどう説明するのだ。彼らは、何を願い、何を求めて、生きているのだ。いつ、他の動物の食材になるかしれない不安のなかでひたすら生きている、生きることの他に目的はあるのか。少なくとも、ここの動物たちには、生きる目的がある。

すべてが管理された地下の世界。水も光も熱も、野性から隔離された人間のための世界。人間でさえも、この社会で存在理由を失えば、分解され肥料になる。ここではそれを定年という。人類繁栄のための人類が選んだ方法だ。

 先ほどから、人型ロボ
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