メーピスカリャー/末下りょう
 
だ)

メーピスカリャーが
どっかの猫と
毛を舐め合いながら、
裏庭で寝そべって

眠そうに
収縮する身体は
自由の縮図 、
王家の末裔
木洩れ日の
化身


ある小雨の夜 、網戸をガリガリする音で目を覚まして、
階段を降りると
メーピスカリャーが
外に出ていった
ぼくは裸足のまま
パジャマで
後をつけた
雨はぬるくて、芝生が足の裏にささった


メーピスカリャーは薄暗い裏庭の真ん中で、ふと立ち止まり
振り向いた








太古からの牙をみせたメーピスカリャーがなにを言ったのか 、
ぼくには分からなくて
拳を握った


その夜を最後に
メーピスカリャーは
帰ってこなかった

ぼくは毎日、駐車場の車の下に寝そべったり
裏庭の木の上に座って
帰りを待ったけど、
いつまでたっても
あの光る眼は
何処にも見あたらなかった


メーピスカリャーの尻尾の先がもしこの世界の果てだったら
ぼくはいつか追いついて

思いっきり
振り回してやりたいのに


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