暴風域/千波 一也
ひとの心に降るという
ましろな雪に
触れたくて
ずっと
ひとの命に寄りそって
ひとの命を
慕ってきたけれど
それは
もしかしたら
ひとの命を奪うことに
なっていたのではあるまいか
ずっと
ひとの命を
盗んできたのでは
あるまいか
不安にかられて
わたしは耳を澄ませる
澄ませた耳には
無音の
無言の
嵐が巻き起こる
それは
わたしを
殺めたりはしないけれど
嵐が巻き起こる
けっして
この身を傷つけないけれど
ひと思いに
楽にはしてくれない
その気遣い
あるいは無情さに
わたしはうち震えている
はかりかねて
うち震えている
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