傾滴路 ?/木立 悟
 





月の半分が雪を履く
霧の下で遊ぶ水
声を呑み
紋を放つ


はじまりへ還る波を
夜が照らす
浜辺の森から
風が吹いている


波は波の上
ゆるやかに変わり
蒼と灰が
空をわずかにずらしてゆく


石の巣に生まれ飛び去る火
窓に消える子らの声
赤く灼けた郊外の土
崖のむこうにそよぐ森


空の上に敷かれた空
空の代わりに踏まれる空
静かな
静かな笑み


双つの金の流れがあり
ひとつは隠れた階段をゆく
街を見下ろす折れた鉄塔
ひとつは窓にからみつく


黒い樹を映した鏡が水を流れる
曇の影が崖を上る
壁の絵をなぞり光は駆け
何かを祈るかたちに爆ぜる


月が葉にそそぐもの
降りやまぬ降りやまぬ空の足あと
灯のかけらの路
夜の溝の路を
下りてゆく






























戻る   Point(2)