名前のない僕/
番田
僕は何もない
道の縁を歩く
そこには何があるのだろうかと
コンクリートの中に存在するものを見ていた
僕は考えていた
子供の頃に見ていた夕暮れだとか
人間は死ぬのだということだとかを
タクシーの陰に隠れながら
目はせわしなく通り過ぎる人に背を向けていた
角の店でリンゴを買ったけれど
心は肥えたナシを夏の日差しの下で盗んでいた
アブリルラビーンのあれほど迷っていたチケットにも
僕は関心は今年はなかった
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