満月みたいな街/ユッカ
舗装された道のうえでぼんやりと月を見あげた瞬間、
すべてが間違いのようになってしまった気がした
ムリに泣こうとしても何もでてこなかった
きっとひどい顔をしていた
夜なんだから照らさないでくれればいいのに
安全と安心が神話となったこの街では、
そんなクレーム、誰もとりあってはくれないだろう
何も今夜がはじめてのわけではない
あたしの生まれる前からこの街は間違っていて、
今更、取り返しなどつきようもなかった
安いイヤフォンからなぐさめみたいに響いてくるラブソングは、「愛は世界を救う」と言うし
ポストに勝手に入ってるチラシは、ピザの写真の隙間から「死んでしまったひとにもう一
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