とりとめもないものは/ホロウ・シカエルボク
 
そうに笑った、ほんとうにそうなんだ、少女はそう思った


回転する円だけが
生きているわけじゃない


浴室からバルコニーに戻ろうと一階のロビーに出たとき、激鉄が上がるような音がして物々しい玄関の扉が開いた、少女は動きを止めてロビーに立っていた、すでに明けた朝の光に存分に包まれながら中に入ってきたのは、だらしないみすぼらしい服を着た自分の母親だった、少女は目を見開いた、一瞬ですべてを理解したのだ、母親には少女の姿は見えていないようだった、母親は何事かぶつぶつと呟いていた、まったくあの子は…もう寝なくては…いったいどうして……


娘は怒りにわなわなと震え始めた、力なく寝室へ引き篭もる母親の背中を見ながら、我を忘れて叫んだ
「あんた、なにしてるのよ!」
母親はまるで聞こえたみたいに一度動きを止めたが、それは少女の声とは関係がない、何か他の理由によるものだった、母親はため息をつきながら後ろ手で寝室のドアを閉めた




なにしてるのよ!









とりとめがない
とりとめもないものは……




戻る   Point(3)