パウダー・フルーツ/
千波 一也
その果実には色がある
制約のもと
つかのま限りの色がある
その果実には形がある
どの角度でも
どの経過でも
思いのほかに柔軟な形がある
その果実には香りがある
己の性の欲望そのままに
香りがある
言い逃れの一切通じない香りがある
その果実には味わいがある
残忍で
卑怯で
不躾で
我儘な
耽美一色の味わいがある
その果実には名前がある
本当はどこにもない筈の
名前がある
なしえない所有を夢見るための
名前がある
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