ある夜/
シズクにて
マンションの屋上のふちに座り込み
スニーカーのつま先と話していた
つま先が「死ね」と言ったように聞こえたけど
私は気づかない振りしたくて鼻唄歌ってた
つま先は何度も言ってきた
私は苛立って つま先の口を塞いでやった
「これでどう?」
夜のキラメキは私を生かそうとする
「もういいや…」
立ち入り禁止の鍵のかかったドアを
慣れた動作でのぼり しゅたっと降りる
ただいまも言わずに
静かに家へと入っていった
スニーカー片手に
裸足のまま
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