つまりデートコース、/片野晃司
そのとき息詰まる草花たちの交尾臭のなかで、燃え上がる街路樹を眺めながらわたしたち、物蔭の薄暗い窪みを探してもそこには必ず先客がいて厳しく追い返されるのでした。つまりわたしたち、正確に計算された露出、正確に計算された色彩、正確に計算された動作、それらがいまこの一瞬のために完全に統制されていなければなりませんでした。ゆるやかに放物線を描く遊歩道があり街路樹があり手すりがあり、プランターがあり芝生がありベンチがあり、転がり落ちる燭台のようにわたしたち、触れるべきわたしたちの部分について語り合いながら、いまここでそれを確かめることはできませんでした。そして視線、服飾がありアクセサリがあり、倒れこんでいく草花たちの体臭のなかで、つまりわたしたち、ようやく日没を迎えるのでした。
Hotel第二章 vol31(2013年1月)
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