自分磨き♪/藤原絵理子
 
本裏側
煤けた提灯や剥げかけた看板が並ぶ
おっちゃんは よろよろと千鳥足
真っ黒な洞窟に入っていく

「磨かんとあかんわ」
水晶玉の上に正座したおばはんは
あたしの顔を暫く見つめて告げる
この一言で五千円取られた

あたしは自分を磨き始めた
フィットネスに行って鍛造した
エステで体表面を鏡面研磨した
料理教室に通ってスループットを上げた

最近では
変身することもなくなった
磨いて磨いて磨いて 磨り減って
性器と子宮しか残ってない

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